STORIES / DONEXT!!
黒豆コーヒーと和菓子、ときどき東京産。
2035年の東京で、真帆が楽しむ喫茶店の時間。
未来の読みもの / FICTION — 未来の暮らしを描いたフィクションです。

未来の読みもの / 2035年の人物・店・出来事はフィクションです。
2035年の東京。喫茶店のメニューを開くと、ブレンド、カフェラテの隣に「黒豆コーヒーと本日の和菓子」が並んでいます。
こんにちは、Wayfinderです。今日は、Interview 02に登場した佐伯真帆のお気に入りを二つ。ロボットバスケの観客体験をつくる彼女も、休日は店でくつろぐ側です。
どら焼きの日は、黒豆コーヒー
真帆が友人と入る喫茶店では、黒豆コーヒーと和菓子のセットが人気です。
この店の黒豆コーヒーは、コーヒー豆を混ぜず、焙煎した黒豆を挽いて淹れる一杯。カップの色はいつものコーヒーに似ていますが、香りも味も違います。
「最初は、コーヒーと同じ味を想像して飲んじゃったんです。でも、どら焼きと一緒に頼んだら、こっちがいいなって」
真帆が気に入っているのは、豆の香ばしさと、あんこの甘さが重なるところ。友人と和菓子を選ぶ日は、飲み物も自然にこちらになります。きな粉のわらび餅がある日は、どちらにするか少し迷うそうです。
2035年のこの街では、黒豆コーヒーを「コーヒーの代わり」として知った人も、お菓子に合わせて選ぶようになっています。昔からある素材が、喫茶店の定番を少し増やしました。

月に一度は、東京で育った一杯を
もう一軒は、都市型農業ビルの1階にあるカフェ。
上の階ではコーヒーの木を育てています。窓から入る光に照明を補い、温度や水を調整する栽培室。東京でこうした店はまだ珍しく、真帆も初めて来たときは、建物を見上げてしまったそうです。
メニューの産地欄には「東京」。同じ建物で収穫した実から豆を取り出し、乾燥や焙煎を経て、1階のカップへ届きます。
近くで育つからといって、安いわけではありません。収穫量はまだ少なく、場所代も、栽培環境を保つ費用もかかる。真帆にとっても、普段の一杯よりちょっと高めです。
「酸味があって、そのあとに甘味が残るんです。ここで飲むのが好きで。毎日は無理ですけど、月に一回くらいなら」
東京産だから、どれも同じ味になるわけではありません。彼女が好きなのは、この店で出す、この一杯。休日に服を見たり、展示へ寄ったりしたあと、窓際の席でひと息つくのが楽しみです。
友人を連れてきたときには、カップを指して「これ、上の階で育ったんだって」と話す。東京で生まれるものが、また一つ増えたことも気に入っているようです。
来月も、あの席へ
コーヒーを育てる環境が変わっていく中で、産地を守る工夫も、新しい場所で育てる試みも続いています。この2035年の喫茶店には、いつものコーヒーと、黒豆の一杯と、まだ少し特別な東京産が並んでいます。
真帆は次の休日、友人と和菓子を食べるなら黒豆コーヒーを。月に一度の寄り道には、農業ビルのカフェを選ぶでしょう。
帰り際には、来月の展示の予定を確認しています。あの店に寄るには、ちょうどよさそうです。