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DoNext!!は、現実の変化を手がかりに「ありうる未来」に人を住まわせ、その人生を仮想インタビューで覗くWebマガジンです。

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STORIES / DONEXT!!

バーチャルオフィスは今、何のために使われているのか。

コロナ禍の急拡大から、出社回帰、そしてAIへ。世界のチームで働く未来につながる、現在の技術と使い方を見てみる。

現実の技術解説 / REALITY — 現実の技術を扱います。

時差のある三つの仕事場から、同じオンラインオフィスと会話の記録につながる人々を描いたイラスト
時差のある仕事場から、同じオンラインオフィスにつながる。
※AI生成のイメージで、製品の実画面ではありません。

宮崎の山村で、昼は農業に関わり、夜は海外のチームと働く翔太。福岡の自宅から出勤し、夕方にはヨーロッパの同僚へ仕事を引き継ぐ美咲。

DoNext!!の「GLOBAL OFFICE」で描いた二人は、2035年の架空の人物だ。働く場所も時間も違うけれど、どちらもオンラインのオフィスで世界の同僚とつながっている。

この世界線では、会社が各国の人材を雇い、地域ごとに仕事を引き継ぐことで、24時間動き続ける。では、その土台になるバーチャルオフィスは、現実ではどこまで進んでいるのだろう。

「ちょっと聞いていい?」の場所が欲しかった

ここでいうバーチャルオフィスは、登記用の住所を借りるサービスではない。画面上の同じ空間に同僚が集まり、誰がいるかを見たり、話しかけたりできる、オンラインの職場のことだ。

その必要性が一気に身近になったのが、2020年のコロナ禍だった。感染対策のために在宅勤務が広がり、隣の席で交わしていた相談まで、画面越しに行うことになった。

在宅勤務で困るのは、正式な会議だけではない。「この仕様、どう思う?」「さっきの話、もう一つだけ」。会議を予約するほどでもない相談のために、チャットを書いて返事を待つ。その間、仕事が止まることもある。

バーチャルオフィスは、こうした小さなやり取りを始めやすくする。アバターや在席表示を通じて、今、誰に声をかけられそうかが分かる。会議の前後も含めて同じ場所で働く、という発想だ。

たとえばoviceは、2020年8月にサービスを開始した。同社の振り返りによると、コロナ禍の長期化でリモートワークの環境を整える企業が増え、2021年半ばごろまで導入企業数の急増が続いた。オンラインに、会議の時間以外にも人が集まれる職場をつくる需要があったのだ。[11]

出社回帰の後、サービスの進路も分かれた

やがて行動制限が緩和されると、出社と在宅勤務を組み合わせたり、出社する日を増やしたりする企業が現れた。「出社回帰」は、単に昔の働き方へ戻す話だけではない。同じ場所に集まることに、どんな価値があるかを企業が改めて考える動きでもあった。

Amazonは、2025年1月2日から原則週5日の出社を求める方針を発表した。その理由として挙げたのは、企業文化を学びやすいこと、相談やアイデア出しがしやすいこと、互いに教え合いやすいことだ。これは同社が出社を重視する理由であり、すべての仕事で出社のほうが成果を上げると証明されたわけではない。[10]

ただ、日本でリモート勤務が消えたわけでもない。国土交通省が2026年3月に公表した、2025年10月実施の調査では、雇用されて働く人のうち、直近1年間にテレワークをした人は16.8%。前年から1.2ポイント増えている。これはバーチャルオフィスの利用率ではないが、離れた場所で働く人をつなぐ必要性は残っている。[2]

バーチャルオフィスに求められる役割も変わった。oviceは2023年の振り返りで、行動制限がなくなるなかで解約する企業があった一方、場所を問わない採用や、離れた拠点をつなぐために導入する企業もあったと説明している。出社とリモートが混在する職場に向け、開発の重点も見直した。[11][1]

コロナ期の「集まれないから使う」需要から、その後も使い続ける理由へ。サービスを提供する側は、どんな仕事に役立つ場所をつくるのかを問われるようになった。進路が分かれてきたことは、最近の各社の発表にも表れている。

Gatherは2026年2月、バーチャルオフィス事業を、ベンチャー資本に依存しない独立事業として継続する方針を発表した。同社によれば、事業は黒字で成長しているものの、当初期待した規模の急成長は難しいと判断したという。AIを探索していたチームがFigmaへ移る合意も発表されたが、バーチャルオフィスそのものの終了ではない。[3]

Microsoftは別の方向へ進んだ。従来のTeams会議内の3D空間やMeshのアプリなどを2025年12月に終了し、Teamsの「immersive events」へ移行。日常のオフィスというより、カスタマイズした空間でのイベント体験を打ち出している。[4]

これらの動きから見えてくるのは、オンライン空間の用途が分かれてきた、ということだ。毎日の相談に使う職場と、人が集まるイベント会場では、必要な機能も使い続ける理由も違う。導入するときも「オフィスを画面上に再現できるか」だけでなく、どの仕事の不便を減らしたいかから考えたい。

世界の同僚と、同じオフィスで働く実例はある

GLOBAL OFFICEにつながる使い方も、すでに見つかる。

ovice自身の公式採用ページには、日本、米国、韓国、オーストラリア、チュニジアのメンバーが、仮想の「ovice HQ」で一緒に働いているとある。国ごとに離れていても、共通の職場を持つという使い方だ。[5]

ただし、同じ空間に入れることと、同じ時間に働けることは別だ。福岡の夕方にヨーロッパの同僚が出勤していても、その全員が日本の朝にもいるわけではない。

そこで必要になるのが、時間の重なるところでは直接相談し、重ならないところでは記録を通じて仕事を渡す仕組みだ。

この考え方には「follow the sun」という名前がある。太陽を追うように、地域ごとの担当者が仕事を引き継ぐ。GitLabの公開ハンドブックでは、顧客の緊急対応について、所在地に応じた8時間の交代枠で担当を回す運用が説明されている。対応が続いている場合は、次の担当者へ状況と進捗を引き継ぐ。[6]

これは、GitLabがバーチャルオフィスを使っているという事例ではなく、時差を利用する仕事の運用例だ。また、会社のすべての業務が、この方式で24時間動いているという意味でもない。

美咲が夕方に仕事を渡して退勤する場面は、この仕組みの延長にある。翔太のように日本の夜を勤務時間にする人も、世界の別の地域とは日中の仕事を共有できる。会社が動き続けるために、一人がずっと起きている必要はない。

AIは、会話を「次の人が使える情報」に変え始めている

オンラインで同僚と話せることに加え、その会話を仕事に使える形で残すことも、サービスの役割になり始めている。時差を越える仕事では、「何を話したか」が後から分かることが重要になる。ここにAIが入ってきた。

oviceの「ミーティングログの拡張機能」は、文字起こし、翻訳表示、要約、議事録の作成を一つにまとめる。会議中には5分ごとにAIが要約し、文字起こしと入力したメモをもとに議事録を生成できる。確認した2026年10月時点では、対象プラン向けの実証実験として提供されるβ版だ。[7]

SoWorkも、会議を記録し、文字起こしや要約を保存して、チームが検索できる機能を提供中と案内している。さらに、ClaudeなどのAIや外部ツールが、誰が在席しているか、会議で何が話されたかといった情報を取得する連携も用意する。[8]

一方、AIエージェントにも机を持たせ、何に取り組んでいるかを見えるようにする機能は、同じ公式ページでも「Coming soon」とされている。人とAIが同じオフィスで働く構想には、提供中の部分と、これからの部分がある。[8]

こうした機能を仕事の引き継ぎに使えれば、次に出勤した人は、会議の最初から録画を見直す手間を減らせそうだ。外国語で交わされた相談も、自分の言語で読み返す助けになる。

ただ、要約がきれいにできても、それだけで引き継ぎは完了しない。「決まったこと」と「まだ迷っていること」が混ざっていたら、次の担当は動けない。AIの文章を確認し、判断の理由や未解決の点を補う仕事は、人が持っておきたい。

これから導入するなら、まず引き継ぎを見直す

では、今ある技術で、GLOBAL OFFICEに近い働き方を試すにはどうすればいいだろう。

たとえば、アジアとヨーロッパにメンバーがいる開発チームを考える。以下は、確認した機能と運用をもとにした活用例で、特定の企業がそのまま実施している事例ではない。

勤務時間が重なる短い時間に、バーチャルオフィスで相談する。会話の記録をAIに整理してもらい、担当者が確認したうえで、共有するチケットや文書に残す。次の地域の担当者はそこから仕事を始め、分からない点を書き戻す。

GitLabのサポート業務の引き継ぎ手順も、状況の要約を残し、引き継ぎが必要な状態を示し、受け取る地域で内容を確認する流れを定めている。画面上で隣に座る仕組みだけでなく、受け取り手が迷わない手順が必要なのだ。[9]

自分のチームで試すなら、引き継ぎにはまず次の四つを残したい。

  • 何が決まり、その理由は何か。
  • 何が未解決で、どこまで確認したか。
  • 次に誰が、何をするか。
  • いつまでに必要で、困ったら誰へ連絡するか。

新人が相談相手を見つけにくい、短い確認のたびに会議が増える、時差で翌日まで作業が止まる。そんな困りごとがあるチームでは、バーチャルオフィスを試す理由がはっきりする。逆に、文章だけで十分進められている仕事まで、常に同じ空間にいる必要はない。集中する時間と退勤後の境界も、最初に決めておきたい。

会社はつながり続け、人は自分の暮らしへ戻る

翔太は、地域で過ごす昼の時間と、世界のチームで働く夜を組み合わせる。美咲は夕方に同僚へ仕事を渡し、友人との食事へ向かう。

その未来につながる要素は、すでにある。離れた国の同僚と一緒に働く空間をつくり、勤務時間が重なるところでは相談し、退勤するときには会話の記録や要約を添えて次の地域へ仕事を渡す。

もちろん、それらを組み合わせれば、国境や言葉の問題がすべて消えるわけではない。雇用の制度も、仕事の前提も、生活の時間も違う。それでも、仕事をつなぐ仕組みが整えば、働くために全員が同じ都市へ集まる必要は減らせるかもしれない。

働く場所を選べる。その先に、働く時間も選べるようになったら、どんな一日になるだろう。翔太と美咲の暮らしを見ていると、バーチャルオフィスの発展が、仕事の外にある時間も豊かにしてくれる未来を期待したくなる。

※技術・サービスの提供状況は2026年10月12日の公式資料確認に基づきます。DoNext!!の登場人物と2035年の描写はフィクションです。